休日があっというまにすぎていく。月曜日、振り替え休日の娘のリクエストを済ませて、午後の隙間時間に鎌倉のFablic campへ。おき忘れた老眼鏡と、先日の展示で購入した作品の引き取り。イトウヨシミさんの、木にペイントされた積み木を選んだ。色合いが好みだったのと、自分は平面のアートよりも、圧倒的に立体的なものが好き。昨年も「みてみたい!」とおもい、一人で盛岡まで展示をみにいった。『BOOKNARD』で開催されていた、小川哲(おわが・さとし)さんの作品。ふたつ購入して、今は本棚の前に飾ってある。夫の切り絵も立体的だし、そういうものになぜか心が惹かれる。動かない立体物のなかにひそむ、躍動感のようなものに。作品の引き取りだけのつもりが、店内は次の展示が開催されていた。『クリスマスまつり』と称した合同展のようなイベントなのだが、中でもとびきり好きなのが『トモダチ』という名のついたリースたち。作家はわたしが尊敬してやまない静岡県沼津市で花屋をいとなむ岩﨑有加さん。作品はすでにふたつ持っているのだが、どうしてもほしくて今年もひとつ、迎えいれる。かわいいリースはたくさんあったが、ひとつ、なんだかちょっとこわさをふくむかわいい、ややこじらせているような容姿のリースが気になった。神様のようなちいさな人形がセンターに「むぎゅ」っと埋め込まれてあり、心臓の辺りに『OPEN HERE』と書いてあった。それで、購入をきめた。どんどん、解放していくと決めたから。こんにちは、いらっしゃい、わたしのトモダチ。
翌日の昨日は朝から横浜へ。SAUCEの仕事を通じで親しくなった、たぶん30歳くらいのMちゃんと。目的があり朝からの活動となったが、たまたま通りかかった『TULLY’S COFFEE – タリーズコーヒー 日本大通り店』でモーニング。横浜市認定の歴史的建造物「横浜情報文化センター」とのこと。建物もインテリアも目を見張る素晴らしさ、高級ホテルのラウンジ並みだった。以前は、地元で20年つづく人気洋食店だったが、コロナ禍で惜しまれつつ2020年9月に閉店したとのことだった。それにしても、さすがは横浜。ロマンティックな銀杏並木、港街の風情、圧倒的なうつくしさ。横浜に憧れを抱く都民だったころの気持ち、再熱。
中華街で目的の用事を済ませて、Mちゃんとは解散。わたしはそこから伊勢崎町の『ジャック・アンドベティ』まで30分ほど徒歩で移動し、観たいとおもっていた『イル・ポスティーノ』を観る。感想はまだ到底言葉にならないが、人生で観た数少ない映画の中で、一番好きだとおもえた。魂を揺さぶられるような映画だった。もしもじぶんがお店を営むようなことがあれば、店の名前は『イル・ポスティーノ』にしたいとおもいながら、妄想に身を包みつつ関内駅に向かって歩く。最後は以前の職場であるパタゴニアの元上司とお茶。お互い退社済みなのであたらしい関係性なのもたのしく、気楽にわらいあう。朝に「お茶しません?」とメールするわたしに、「ぜひ!」と連絡をくれるような人で、スピード感が同じだから気が合う感じ。数十人をまとめるようなポジションの、いわゆるえらい人だった。当時からわたしのような下々(しもじも)にも分け隔てなく、みなの名前を正確に覚え、下の名前で呼んでくれて、声をかけ、気をくばってくれた。様々なきっかけ、出来事、思いきりの源を知る由もないし、そこに興味も好奇心もないが、英断や門出を応援したい。たくさん転職を繰り返してきたわたしだが、退社するとたいていの人のことは忘れてしまう。嫌だったこと、苦手だった人、つらかったこと、どんどん忘れてしまう。心に残る人、関係がつづく人は一握りだ。彼らのことを、わたしはずっと忘れない。日々のおこないの中に、言葉に、行動に、やさしさや真心があったから。それらは、振り返れば忘れない映画のようで、心に余韻を残す。出会えてよかったと感じるものは、作品も映画も人も、自分にとっては分け隔てがない。全部、アートなのだから。