午後から茅ヶ崎で打ち合わせがあり、その前にKさんの自宅にお邪魔したのは昨日のこと。朝にKさんと電話をしていて、茅ヶ崎に行くんだと伝えると、気分でストップ・バイしてとのこと、お言葉に甘えることにした。
晴れも好きだが雨のドライブも悪くはない。手土産に最近ハマっているがんもどきを持参したく、豆腐屋経由で向かう。Kさんは今日から数週間ハワイへいくとのこと、冷蔵庫の整理をしたいからと、常備菜をいろいろ盛り合わせて食べさせてくれた。そのプレートにがんもどきを乗せて、あれこれつつく。途中、持参したあずき茶と、Kさんが淹れてくれたチャイを飲んだり、茹でたあずきを食べたりしながら。いつでも人生の先をゆくKさんは、子育ても終わって仕事もしつつ、軽やかに海外を飛びまわっている。昨秋は一ヶ月くらいご夫婦でヨーロッパを旅していた。ギリシャ、ポルトガル、フランス、スペイン、スイス、あとはどこだったかな。あんな未来が自分にもくるのかなと、いつの時代も明るい希望と光をくれる。出会ってからずっと、おなじ温度で大好きだ。
Kさんと別れて、車で数分の<BRANDIN>へ。冬季休業中なのだが、打ち合わせがあり宮治ご夫妻とゆっくり話す。きちんとプレゼンしたいことがあり、自分のビジョンと描いていることを伝えるべく、言葉を探して、選んで伝えたつもり。ご主人の宮治さんは目力も投げてくる質問もするどくて、直球の高速球をすぐさま投げ返してくる感じだった。必死にグローブで受け止めるのだけれど、「バシッ!」と、音とスピードがしっかり手に届く感じ。語彙力がなくて残念だけれど、凄みがすごかった。急坂と緩やかなカーブのロング・アンド・ワインディングロードをひた走る、ハンドルはしっかりホールド! みたいな感じ。緊張感のある時間で、率直にとてもたのしかったし、会話を軽快にはこぶ勉強になった。宮治さんは、パンのCMのキャッチコピーにある「余計なものはいれない、超塾(パスコ)」みたいにシンプルで直球な人だった。見習いたい点がいくつもあった。
後半はひろみさんとゆっくりおしゃべり。窓の外から、向かいのお家のパピーが見えると「あ、出てきた」とうれしそうに視線をうつすひろみさん。そのワンちゃんの話から、その昔我が家で飼っていたセキセイインコの話になった。家にきてから亡くなるまでのエピソードを話していたら、我ながらなんてかわいい、そしてなんてあったかい話なのだろうと、視界が滲んでびっくりした。もっとびっくりしたのは、滲んだ視界の先にいるひろみさんがわたしよりも先に涙をこぼし、手で拭っていたこと。都会の片隅でそんなエピソードがあったんだね、というようなことを言ってくれて、二人で笑って、泣いて、また笑った。
昨日もたくさん音楽の話をした。その話題ごとに、ひろみさんが席を立って膨大な棚からレコードを探しては持ってきて、プレーヤーでかけてくれた。「長生きしたいな、あとどれだけ知らない音楽を聴けるだろうっておもうんですよ」と言ったのはわたし。知らないジャケット、知らないアーティスト、知らないタイトル、知らない音を、体の内側にひとつでもおおく、入れられるだけ入れて、天にのぼりたい。それが、生涯をかけていちばんと言っていいほど、やりたいことかもしれない。今日のことをずっと覚えているだろうな、宝物のように。雨を、雨上がりを、空を、音を、会話を、服の色を、あのレコードジャケットを、きっとわたし忘れない。忘れられるはずがない、そんな三月の雨の日。