出かけたい用事があったので朝からひたすら縫って、なんとか昼には終わらせてお出かけ。昨日は久しぶりの横浜・妙蓮寺にある『本屋・生活綴方』へ。生活綴方は、三輪舎の中岡祐介(なかおか・ゆうすけ)さんが立ち上げに多大なる労力を注いだであろう本屋。中岡さんには、過去にタイパンツ展でお世話になったり、もっと前には自費出版した『SUNNY SIDE』の編集を、そのもっと前にはわたしが運営していたギャラリーの企画展(本を贈る展)でもお世話になった。というわけで、なんだかんだで結構ながいお付き合い。
昨日は盛岡にある本屋『BOOKNERD』の店主、早坂大輔(はやさか・だいすけ)さんのトークイベントと、ゲスト店番の日だった。中岡さんは、わたしの知る限りもう何年も前から早坂さんに妙蓮寺へきて欲しそうにしていた。中岡さんはこの数年、何度も盛岡へ足を運んではブックイベントに協力・参加していたようだった。妙蓮寺で会うと、早坂さんのかっこう良さ、イケボであることなどもおしえてくれていたし、その想いの分だけ、描いている夢がなかなか実現しないことに、しょんぼりしているのも手に取るようにわかっていた。とにかく、そんな気持ちを全部ひっくるめて早坂さんのことを尊敬していてだいすきなんだろうなあ、というのが中岡さんの全身からダダ漏れしていた。そのはかない恋心のようなものをはたからみていたので、昨日、ついに!! とおもったら、中岡さんにおめでとうを言わずにはいられなかったわけである。
店にはいると、たまたま他のお客さんがいなくて中岡さんと早坂さん、店長の鈴木さんがいた。私自身は数年前に一度、盛岡の本屋へ展示を見にいったので、早坂さんとお会いするのは二度目。その以前にわたしの本を仕入れてくださったこともあり(写真家の杉江くんが繋いでくれた)、DMなどではすこしやりとりをしていた。盛岡のお店に足を運んだときは寒さに向かう途中の秋だったけれど、昨日は『クソ暑い』という言葉を使いたくなるような酷暑だったので、お互いに夏服。早坂さんはTシャツに短パンにネイビーのキャップをかぶって、カジュアルなおじさんだった。立ち上がった姿、背がこんなに高い人だったっけなあ、なんておもいながら、とにかく中岡さんに「よかったですねえ!」という。みんなでおしゃべりしているとき、話の流れで「本屋はくすぶっているとき(くすぶっているフェーズ)に来ることがおおいかも」みたいな話になった。そうして、「そこを抜けるとこなくなることもあるよね」、「くすぶるってことは若いってことなのかもしれない」、なんて話をニコニコしながら交わしているおじさんふたりは、すごくいい感じだった。確かに、本はいつでも静かに迎え入れてくれるし、本屋はそんな空気が流れているような気がする。いずれにしても、こんなことを語り合うおじさんたちが本屋に関わっているのだから、そりゃそうだよね、とおもいながら耳を傾けていた。わたしもくすぶることにおいてはベテランの域なので、これからもきっとあるだろう。若いってことらしいし、悪くない。ふたりのやりとりは、はたから眺めていて、微笑ましいあたたかさがあった。撫でてくれるような、あるいは、何もいわずにとおくから見守ってくれているような。いかにながい時間をかけて、中岡さんが紡いできたこと、早坂さんがうけとってきたであろうものをたくさん感じた。夢は、すぐに叶わないほうがいいんだな。
早坂さんの本屋『BOOKNERD』がとても人気なのはきっと有名な話。おそらく、ゲスト店番にやってきた早坂さんに会いたい、話したい、みたいな人はおおいのだろうと想像していた。だから本を選んだら早めに帰ろうと、本棚を眺めていた。選んでいる間、店がちいさいスペースなこともあり、聞くともなしにやりとりを聞いていると、「ガチャガチャやりたいです、なんえんですか」と早坂さんに話しかけている小学生がご来店。『本屋・生活綴方』の店頭にはガチャガチャがあるのだ。店番のコーナーは入り口にあるので、お客さんは聞きやすい。心の中で「ぷっ」とおもっていると、ほど無くして「ガチャガチャやりたいです、りょうがえしてください」、別のこどももご来店。そうこうしていると、またまた別のこどもがやってきてふたたび両替を頼まれている。「ちょっとまってね。まさよさん(鈴木店長のことをそう呼んでいた)、100円玉が少なくなってきました〜」と早坂さん。盛岡からはるばるやってきた早坂さん、ガチャガチャの対応に大忙し。ほのぼのとした、本屋・生活綴方らしい展開。そうこうしているとお客様がどんどんはいってきたので、本を選んでお会計を済ませ、挨拶をして店を出る。中岡さんの長年の夢だったはずが、それを聞いていた私までなんだかいい気分で、幸せのおすそ分け。店を出るとき、中岡さんが見当たらなかった。うれしすぎて妙蓮寺の町中をスキップでもしていたのではないか。灼熱の土曜日、午後3時くらいのこと。