西鎌倉のLEPOLKU(レポルク)へいくのは、昨日で3回目。レポルクは自宅の一角が飲食店になっている。陽の光や風の流れをどれだけ心地よく感じることができるかを考えて建てられたのだろうと、行くたびにおもう。だって空間が気持ちいい。あとでわかったことだが、仲間の旦那さんが設計施工をした家だとしる。なるほど〜、とうなるセンス。
最初に訪れたとき、「領収書の宛名はコトリビーチでおねがいします」と言うと、店主の女性が「タイパンツの人?」と言った。いくつか会話を交わしていたら、その横でナポリタンだけを作る(その他のドリンクは全て女性がおこなっていた)店主の旦那様が「僕、タイパンツよく履いてましたよ。タイとかで」みたいなふうに会話にカットインしてくれた。その男性が「実物をみてみたい」と言ってくれて、タイパンツを持参してうかがったのが二度目。三度目の昨日は生地のサンプルをもっていき、彼からオーダーを受けた。
ナポリタンをつくるその男性は、ふだんは鎌倉・大町の『邦栄堂製麺所』で工場長として働いている。週末になると敷地内にはフードトラックがでてきて、そこで焼きそばを焼く。最初にその焼きそばをいただいたのは、例によって単発で依頼をうけるチャハットでバイトをしているときだった。食べることがとにかく大好きな大竹シャチョーが、ランチタイムに買ってきてくれた。それが、工場長がつくったものとの最初の出会いだった。
昨日一緒に足を運んだのは写真家の杉江篤志(すぎえ・あつし)くん。工場長はバンドを組んだり楽器も弾ける様子で、昨今バンド活動にお熱を上げている写真家(カメラはどうしたのだろう)の杉江くんも、たのしそうに会話を交わしていた。お客様が帰られて、4人でテラス席にすわりあれこれ話す。音楽の話、陶器(タイル?)の話、パパイヤの話、チャハットのこと、ものづくりのこと、ジブリパークの話など。興味のある話題には興味のある人が、そうでもない会話のときはテラスに吹き込む風にあたってのんびりする。そういう感じで、時間がゆるく永遠に過ぎていく感じ。
途中、工場長が自身のCDとレコードを渡してくれた。こういう写真で、こういうイラストを好んでジャケットつくるひとなんだ、センスいいなとしばらく眺める。わたしはわたしで、オープンのお祝いにどうかなと、自身の本の『Birdsong』と『Sunny Side』をこっそりバッグにしのばせておいたので、それをプレゼントする。『SunnySide』の写真は全て杉江くんが撮ってくれたので、本人が目の前にいると説明もはやい。「作ったものを交換できるっていいですよね、その人がわかる感じがする」と話しながら。でも、それってお店もそうなのかもしれない。どんな器で料理を盛り、どんな音楽を流して、どんなインテリアが好きで、店主はどんな味をおいしいと感じて好み、客に提供してくれるのか。メニューはコーヒーだけなのか、ビールもおいてあるのか。メニューひとつ、グラスひとつ、集中してそれらを観察するタイプではないわたし。だと思っていたけれど、もしかしたら知らず知らずのうちに、そんな店主が作りだす空間にじぶんは癒され、解き放たれ、目に見えないあらゆるものを体の内側に取り込んでいたのかもしれない。その昔、師匠であり美術作家の永井宏(ながい・ひろし)さんが「お店は自己表現の場だからね」と言っていたことをふと思い出した。当時は「ふーん」と聞き流していたが、もしかして、こういうことを言っていたのかな、なんておもった昨日のLEPOLKU。じぶんがお店をやることはきっとない。けれど、わたしはわたしのやり方がある。それは布であり、糸であり、パターンであり、時に言葉である。自分の好き、自分のおもう美しさを、それらで表現したい。がんばろっと。なんだか自然とそんな気持ちになるような、やさしくて心地のいい時間だった。彼らのおかげで、まったく縁のなかった西鎌倉という土地がぐっと身近になり、とてもすきな場所のひとつになった。