レンバイの『SAUCE』の仕事をはじめてから、料理人との異業種交流をたのしんでいる。そして、驚いている。
日々ちがう食材をつかって、様々な料理を運んでくる彼ら。そのほとんどは真似ができないとおもうものばかりだが、ごくまれに、「やってみようかな」とおもう料理がある。例えば『仕出し屋 満(まん)』のれいちゃんがつくってきた『絹揚げと小松菜のおひたし』。おいしかったので手順を聞いたら、「かんだんだよ、絹揚げをフライパンで1時間焼いて…」と聞いて、「はい、ムリです」とおもった。料理人達に何時からつくっているのかと聞くと、彼らは3時や4時から、普通につくっているという。タイパンツ作家のわたしにとって、それはとんでもないことだ。やってすらいないが、聞いただけで萎える。まぶたがくっつきそう。『YUGE』のナベさんと一緒に仕事をしているMちゃんがつくる副菜の一つ、『カブのうま煮』が名前のごとくほんとうにうまかったので、やっぱり作り方を聞いた。すると「カブを一晩干して…」という。洗濯物を干すのもきらいなわたしがカブを干す?しかも一晩!?外干しですか、部屋干しですか。どっちにしても、だいきらい。ガス乾燥機カンタくんがほしいんです。
売上精算は週締めでおこなう。料理人、雑貨担当など、各関係者に支払いをする。その際に集金袋をつかうのだ。オーナーから引き継いだとき、ビニールのジッパーがついた袋でそれはおこなわれていた。全然構わなかったのだが、暇だったし、集金袋を布でつくってみた。ちょうど生地が痛んできたじぶんのタイパンツがあったので、それをつかって7人分、7つ。たまたま、全員の屋号や名前がちがったので、彼らの頭文字のイニシャルを、ミシンで縫った。普通の、ジッパーがついた簡単なつくりのやつ。それを手渡したとき、「え!これつくったの。すごすぎる!」と皆が一様にほめてくれた。かわいすぎるかなとおもったイニシャルは、手刺繍だと甘い感じだから、ミシンで文字を描いた。それも大変好評だった。
わたしの簡単と、あなたの簡単。わたしの普通と、あなたの普通。そこには大きな川が流れていて、想像以上のへだたりがあるようだ。目にみえないし触れられないから、表現しないとわからない。形にしてみせることで、はじめてそれを知ることができる。発見と驚きと、よろこびのようなものがあちらこちらに散らばっているSAUCEの仕事。「やったことないから遠慮します」と言っていた三ヶ月前のじぶんに、そっと耳元で教えてあげられたらよかった。「おもしろいことがまってるよ」、「じぶんのこと、もっとほめていいって彼らがおしえてくれるよ」と。この仕事もあと通算、15日。まだ終わってはいないけど、たのしかった。ありがとう。その恩返しができるような仕事を、今日も。