茅ヶ崎市は南北にながい。海側と、山側。その山側に、事務所と倉庫と工房と呼んだらいいのか、巨大な場所を構える末綱浩次(すえつな・こうじ)さんは、<LOGGER WOOD SUPPLY CO.>の代表を務めている。木材を扱っていて、店舗の内装の仕事などを中心におこなっているはずだか、彼の仕事は多岐にわたるのではないか。代表といっても母体はひとりなのかもしれないが、ひとりのようで、人と一緒に仕事をすることが仕事でもあるとおもうし、一言では簡単に説明ができない。そして、きっとわたしはまだまだ彼の仕事をよく知らない。友人であり、おにいちゃんみたいでもある。お互い九州にルーツを持っているだけあり、顔立ちに南方系のニュアンスを感じるから、親戚にあったような安心感がある。それは最初にあったときからずっと、今もおもっていること。くしゃっと笑った顔がなんとも良くて、「クシャッと笑う」、という表現が本当にしっくりくる人だ。
昨日はLOGGERではじめてのイベントがあると聞いて、足を運ぶことを楽しみにしていた。先日電話で聞いたら、埼玉県の入間市に店舗を構えるセレクトショップ、<LAND>という店の店主の通称『まっちゃん』の企画だそうで、彼の仲間達が一同にやってくるような、そんな感じなんだと聞いていた。服、パンツ、ハンバーガー屋もくると聞いて、わーなんかいいねとおもった。近所に住むKちゃんもいくというから、彼女の車に乗っかって、わたしは向こうでハンバーガーとビールだぜと企んでいたのだが、Kちゃんの夫も行きたいと言い出し、まさかのわたしの夫も行きたいと言い出したので、結局それぞれの車で向かうことに。
先日、仕事で会計ソフトのことを調べる必要があり、詳しい人は誰だとおもっていたら、ふっとYさんの顔を思い出して電話をした。Yさんはわたしが19歳でアルバイトをしていた時のカフェのオーナーで、ひとまわり歳の違う男性。半年振りくらに電話をしていきなり本題に入ったのだが、話の理解が早い人なので、要点をつかんでくれてサーっと説明してくれた。「ありがとうございます、またね!」とさっさと電話を切った。ふと、Yさんもロガー好きかもな、とおもい、前日だったかラインで誘ってみたら、Yさんもくるという。そんなわけで、夫とYさん、二人のおじさんを引き連れて茅ヶ崎までドライブ。
何度も足を運んだことのあるロガーだけれど、昨日はまたちょっと違う雰囲気になっていて、でもいつもの雰囲気が損なわれることはなく、とてもいい塩梅だった。夫はさっさとビールを飲んでいたので放置し、Yさんと会場をうろうろ。Yさんは銀座でハンバーガー屋をやっていた時代もあるので「ハンバーガー食べます?」と聞くと「昨日食べたんだよね」という。そして、「あの写真いいよね」と、会場の一角に設けられたギャラリースペースのような場所を指さしていった。写真の人がイベントに出るなんて書いてなかったし、「あそこ、なんなんですかね」と言って二人で近づいた。
Yさんは90年代に、新宿で<ニューヨーク・カフェ>と<ニューヨーク・マフィン・ファクトリー>というカフェを経営するオーナーで、わたしはそこのバイトだった。Yさんは写真も好きで、内装で飾る写真は自らニューヨークに撮りにいくほどで、その写真がまたとてもセンスがよかった。ゴミ箱一つ買うのにニューヨークに行くような奇天烈オーナーで、一緒に七里ヶ浜で波乗りもしたし、西新宿でスケートボードもした。仕事(主に掃除と美的感覚)は厳しかったけれど、最高に楽しいオーナーだった。そんな写真好きなYさんだから、昨日はその写真が飾られていた一角で、写真家の菊池崇(きくち・たかし)さんと実に楽しそうに言葉を交わしていた。菊池さんはとても素敵な写真を撮る方で、ニューヨーク、カウアイ、オアフと、いろんな写真があった。夫もわたしも、一枚づつ購入させてもらった。
そうこうしていたら末綱さんもやってきて、Yさんを紹介する。ノリで、遊びで来たとおもっていたYさんだけど、木材のことで興味があってきたのだと、末綱さんとの会話ではじめて理解した。Yさんは、遊んでいるようでいつでも仕事熱心なのだ。最近は飲食店のコンサルティングのような仕事もしているのはうっすらと知っていたので、なんとなく、末綱さんの仕事につながることがあるといいなー、くらいはおもっていたけれど、ちゃんと視野に入れて動いているのがさすがYさんであった。Yさんは某私立の幼稚舎から大学までエスカレーター式であがっていった、いわゆる典型的なおぼっちゃまくん。加えて、ザ・バブル世代。だからといって気取らないし、飾らないし、人を値踏みしない。いっつも静かにおもしろくて、笑いのツボがちかい。センスがよくて、好きと嫌いがはっきりしていて、ダメなものはダメだと、ビシッと相手に言える人。わたしがバイトをしていたとき、20歳になって夫と出会ったので、Yさんは付き合いたての、当時26歳だった夫のこともよく知っている。「みも、あの人ほんとうに大丈夫なの? だって無職なんでしょ?」と、無職でロン毛で、なのにヨットには乗りにきていた、こうして書くと確かに相当ヤバめな夫のことを、すごーーーーく注意深くみていた(わたしは当時大学のヨット部で、夫はOBとしてヨットを乗りに来ていたのだ)。昨日はその話を振り返りながらのドライブで、三人で大爆笑しながらの楽しい道中だった。トレンディドラマに憧れて、コンクリートの打ちっぱなしのマンションに住み、ギバちゃん(柳葉敏郎を彼はこう呼びます)になれるとおもって上京して、現実に打ちのめされていた夫。当時は廃人のようにダークサイドにいたので、六歳年上のシティボーイのYさんを、羨望の眼差して見つめていたらしい。そりゃそうだよね。32歳で都内でカフェを二店舗も経営して、社用車なのにフォード乗って(わたしが乗りたい、古いポルシェにも乗っていたことが昨日判明した)、ニューヨークに買付いって。確かにすごい人だったんだなと、今になったらわかる。でも、Yさんは執着がないからいつも次のことを考えているような人で、そこが魅力の一つな気がする。職人タイプではなく、数字にも強いし、側(がわ)をつくる才能が秀でているような人。だから、まわりにはあんまりいないタイプなのだが、昨日Yさんが末綱さんに「みもが紹介してくれるってことは、きっとセンスのいい人なんだろうとおもってきました。ウェブサイト(インスタ?)も見てきました」と言っていて、それがじんわりと嬉しかった。わたしのこと「ことり」って呼び捨てする男子は地元の高田馬場にたくさんいるけれど、「みも」って呼び捨てする男性は父とYさんだけ。それもなんだか嫌いではない。そうそう。父とYさんは大学が同じで、父はYさんのことを「後輩」とか、「後輩の店」とか言っていたことも、昨日ふっと思い出した。パパ、元気かな。すっかりご無沙汰しちゃってるから、顔を見にいこうかな。