はじめて一緒に呑む、Cちゃんと新年会。お店をどこにしようかと迷っていると「カリーノは?」と提案してくれたので、予約をとる。カリーノは、鎌倉で木曜日だけ間借りでオープンしているイタリアンで、知人の春日さんが開いている。サックスを吹く人でもある春日さん。予約した12時に店へ入ると、ジャズがかかっていた。この曲なんだっけなあ、タイトルが思い出せない。スマホでShazamをするも、開店と同時にほぼ満席となった店内、お客さまの賑やかな会話にかき消され、曲名がわからずにいた。昨晩、どうしても気になってインスタグラムのDMで質問したら、オスカー・ピーターソンの『ジョージア・オン・マイ・マインド』と判明。そうだった、ああ、スッキリ。DMの返信には、もう一曲おすすめがありますと。「『Hymn to Freedom』という曲で、とても穏やかなのですが、とても力強い曲です」と書き添えられてあった。早速Apple Musicで聴いてみると、確かにその言葉通りの音で、とても好みの楽曲だった。日本語だと『自由への讃歌』。気になってこの曲がうまれた背景を調べてみると、公民権運動に精力的に動いていたキング牧師に触発されて作った曲とのことだった。歌詞を書かずにピアノでそれを表現するオスカー・ピーターソンの才能の素晴らしさを、あらためておもう。音で、絵で、写真で、立体作品で、料理で、縫い物で。いつの時代も皆が平等に、自由への讃歌を表現できない訳ではなく、そう考えると言葉とは、「言葉さえあれば」という面が透けて見えてしまう。言葉だけで訴えられることの容易さみたいなものを、感じずにはいられない。語るよりも別の方法で表現することのほうが、もしかしたらより多くのもの伝えられ、同時に、相手に受け取る自由も手渡せるのではないか。それこそが芸術なのかもしれない。相手の自由を奪うことのない文字の連なり、選択を支配することのない言葉、いつの日か、じぶんもそんな文章を書けたなら。楽器を弾くように、演奏をするように。そんなことをおもう朝はあっという間に過ぎて、今はもうお昼。来月は生誕100周年を記念した映画『オスカー・ピーターソン』が公開されると、今しがた知った。必ずや映画館に足を運んで、大きなスクリーンで、良い音で映画を味わいたい。