朝一で茶華道部にいく娘を送り届け、市役所へ。書類が出来上がるのを待っていると、ロビーで一斉に緊急津波警報のアラームが鳴る。場所が場所なだけに、ベンチに座っていた隣の女性から「これは訓練ではなく、本当のやつですか?」と声をかけたれた。スマホで検索する。「本当のやつみたいです」とわたし。ここにいれば安全かもと一瞬はおもったが、やはり帰宅することにした。山側のコースと海側のコース、ふたつがあるので山側コースを選んで運転。
自宅に戻る前、近所に住むサーフショップのオーナーのKさんに会う。「3メートルってあまり聞かないし避難したほうがいいよね」とKさん、「そうですよね」とわたし。それぞれの車で一緒に高台に避難しましょうか、となった。一旦家にもどり、Kさんはわんちゃんをピック、わたしはおおきめなウォーターボトルに水1リットル入れ、キャップ、充電器とスマホ、財布だけ持って車に戻る。
近くの高台は、日頃からよく散歩をしている。どのコースがスムーズか、木陰がどこかも熟知しているので、その知識がほんとうに役に立った。この気温と日差し、外にいたら疲弊するに違いない。木陰に車を停めると、ほどなくして先輩から電話。犬と一緒に車にいて、避難するならどこがいいかなと聞かれたので、同じ場所を口頭で案内する。あっちはもう車が混んで身動きがとれないので、こっちの道を通ってくださいと伝えて電話を切る。ほどなくして、伝えた場所に避難できて、今は木陰にいると先輩から折り返しのLINEがきて、一安心。
2時間くらいはここで待機することになるだろうとおもったので、車の外に出る。Kさんも出てきたが、すぐにエアコンの効いている車にわんこと戻ってしまった。Kさんの車には同乗者がふたりいた。聞けば、今日はKさんのサーフスクールだったそう。一人は何度かレッスンにきているらしい都内から来た日本人の男性。もうひとりは今日初めての参加で、シアトルから来たアメリカ人男性。明日帰国するとのことだった。「朝に波乗りしていたらウニが刺さっちゃったんだよね」と、足の裏を見せられた。痛々しい足。それでもニコニコと感じのいい人で、3人でダラダラおしゃべり。はじめましてなのだけど、なんだかみんなメロウでいい感じ。
ジャスティンという名のその彼は、なんと14ヶ月も旅をしていたそうだ。ポルトガル、スペイン、イタリア、スリランカ、タイ、インド、あとは忘れたが各国を巡り、日本にも2ヶ月くらいいたらしい。福岡、岡山、和歌山、京都、大阪、伊豆、東京、鎌倉など。「なんでそんなに休めるの!?ローーーーングバケーションだね!」というと、ジャスティンはキッパリ”not vacation”といった。そういうジャーニーをすると決めてお金を貯め、前職の仕事を辞めたのだそう。今は、自分で仕事を立ち上げるまでの期間だそうで、「ヴァケーションではなく、自分自身の成長、勉強、経験、コネクションをつくりたいとおもって旅をしたんだよ」と教えてくれた。LIFE COACH という肩書きで、ジャーニーを通じてその人の本来の生き方や、人生を見つけていくお手伝いをしたい、みたいなことだった(途中英語が早くて具体的にはわからなかったけれど)。ライセンスは要らないけれど、数ヶ月スクールで勉強をした、みたいなことも言っていた気がする。これまでは病院に勤めていたというから、カウンセリングのような仕事だったのかなと想像する。自由になったんだねというと、「そうだね、マネージャー(上司のような意味)もいないしね」というので「レポート(報告書的なこと)もないもんね」とわたし。私自身も、会社勤めを辞めてフリーで縫製の仕事をし始めたばかりだと伝えると、「あたしい人生の幕開け、おめでとう」と言われたので”Both of us!”と答える。
一緒にいた日本人の男性はおおくを喋らない感じの人だったけれどずっとニコニコしていた。単語の知識や日本の地理の知識がわたしよりもはるかに深く、わたしがわからない部分は彼がわかる、みたいな感じ。おかげで、わたしのだいぶ壊れちゃっている英語でもたのしく会話がはずみ、とてもいい時間だった。『河津七滝(かわずななだる)』なんて、その彼がいなければさっぱりわからない名所だったし、滝をウォーターフォールと呼ぶことも、昨日はじめて知った。
そんな感じの数時間を過ごしていたら、娘から電話。保護者がお迎えに来れば帰宅が可能とのこと。皆とはインスタの交換などしてバイバイし、車で中学校へ向かった。帰宅したらなんだかどっと疲れてしまい、ぐーぐー昼寝。夜は再び車を出して夫をお迎えにき、みんなでロイホ。送迎と避難で終わったような感じ。おもったことは、普段から避難場所を避難場所だとおもわずに慣れ親しんでおくこと、太陽のめぐり方や木陰を知っていることなんかが、案外とても役に立つということだった。桜がキレイ、道がひろくて気持ちいいね、なんて会話を交わしていることが、安全につながる。予期せぬことを知った1日で、同時に予期せぬ人と友達になった1日でもあった。被害がないことを祈るし、ジャスティンも無事に本国へ帰国できますように。