昨晩、はじめての『TRES』(トレス)へ。ビールやワインがおいしくて、ごはんもぜんぶ美味しいとまわりから聞いていた店。子連れだといけないし、指を加えて噂を聞いていた店。この夏、より一層に親交を深めているママ友に事情を話すと娘を預かってくれるというし、娘のお迎えは夫がしてくれるというので、「わーい!」と甘えることに。
仕事を終えてお店に着くと、二人の先輩はもう着席していた。UさんとCさんは、わたしが以前運営をまかされていた由比ヶ浜のギャラリー、『BORNFREE WORKS』(ボーンフリーワークス)の、きっかけをくれた二人。頭が上がらない。上がらない割に遅刻をしている自分もどうかと思うが、とにかくそういう先輩。上座と下座とか気にしながら座る。ゆるさの中に潜む体育会系のノリに笑いながら乾杯。ずーーーーーーっと笑わされて、涙を流しながら笑っていたら、三時間経っていた。先輩達とは、わたしの師匠でもある永井宏(ながい・ひろし)さんの話題もたくさんでた。先輩達が生前の永井さんと親交があったとき、わたしはまだ高校生くらいなはずで、町田にある和光高校に通いつつ、主には新宿か下北、実家のある高田馬場にいた。湘南と言っても鵠沼海岸にサーフィンをしにくるくらいで、永井さんはもちろん、Uさんの活動も、Cさんの作品も、なにもしらなかった。みんなを繋いでくれた師匠はこの世にいないし、先輩達とは同じ時代を共にしていないのに、こんな風に話せて、笑えて、すごいな、奇跡みたいだな、と思った。
その場にいない人の話が出るとき、明るい話題、笑える話題、その人のいいところの話題など、そういう言葉に耳を傾けるのが大好きだ。昨日はわたしの夫の話題もたくさん出た。Uさんと夫は見つめているものが不思議と似ていて、わたしにはまだ見えていない少し先の景色を、わたしに見せてくれることがおおい。「みもちゃんはだいぶ頭が柔らかくなったよ、最初はもっと頭がかたかったよね」とUさんに言われた話を、今朝夫にする。「『かたい』って言葉には色々あるけれど、みもちゃんはビビりだからね」とのこと。そうかもしれない。大胆に思われがちだけれど、基本的にはとってもビビりなのだ。ゴキブリが怖いし、蜂も怖いし、目立ったことをするのが嫌だし、注目されることが嫌だし、土の上を歩くと靴が汚れることもびびるし、雪の上を歩くときも怖くてしょうがない。札幌で『カンジキ』をバッグに携帯していたくらいに、雪道が怖い。そして必ず転ぶ。永井さんに出会うまで、会社だってやめるつもりなんてなかった。「辞めたい」と口にしても、辞める勇気はなかった。一人暮らしをしたことがないので家賃なんて払ったことのないわたしにとって、家賃を背負ってまでギャラリーの運営なんて、もっとも避けたいことだった。ビビりだったんだよ、わたしは。今だってそう。そういう、安全で安心のために鍵をしていた扉をノックしてきて、「おいでよ」って手招いてくれたのが、師匠であり、Uさんであり、Cさんだった。かなわないなあって思う。追い越せるはずがないし、追い越したいなんてまったく思わない。ずっとその背中を追っていたい、ビビりながらね。