声を大にして言いたいが、修理の仕事ってほんとうにむつかしい。おなじものがほとんどないし、素材も違うし、大抵がはじめまして。昨日はスエット、自転車用のグローブ、ルームシューズの修理品を前に、触ったり考えたりしていたら時間があっという間に経ってしまった。打ち合わせでやってきた写真家の杉江篤志(すぎえ・あつし)君が、玄関のチャイムをピンポンと鳴らしたのは13時前くらいだった。干物を焼いたりしている間、杉江くんのホットな近況を聞いておもしろがったりしつつ、簡単なランチをしながら、お願いしたいことをざっと話した。<BRANDIN>ではじめるあたらしい活動に際して写真が必要になり、そこの部分を彼におねがいしたいとおもったのだ。これまで、もしかしたら白黒の写真を得意としてきたのかもしれないが、最初に彼を知ったのがたまたまカラーの写真展のときだった。それがとても良かったので、自著の『Sunny Side』に載せる写真もカラーでお願いした。わたしは杉江くんの撮る写真がとても好き。
空間を見てくれればイメージをつかんでくれるだろうとおもったし、単純に音楽好きだから一緒に<BRANDIN>にいこうとなって、杉江くんの運転する車で茅ヶ崎へ。曇っていた午前中が嘘みたいにどんどん晴れてきて、波もすこしづつ上がってきた様子を眺めながら、134号線を走る。窓を開けても寒くはないし、潮風と波の音が気持ちいい。サーファーも、まだまばら。自分が知っている限り、春の陽射しの中だとといちばん好きな、湘南らしい風景だった。
道中で杉江くんがかけていたのは<グレイトフル・デッド>だった。彼らを好む人たちをデットヘッズと呼ぶことも、昨日はじめて知った。小鳥さんのまわりにもいるのでは、みたいな会話になったので、「どんなファッションを好む人たちなの?」と聞いたりして、答えを紐解いていく。「あー、なるほど! いるかも」と回答用紙を埋めていく感じで、楽しいドライブだった。お店につくと、偶然とはいえまた<グレイトフル・デッド>がかかっていた。デッド、キテマスキテマス、って感じだ。ものすごく好きかと言われるとまだよくわからないのだけれど、「こういうのすき」っておもう音(曲?)がふいに流れる。<グレイトフル・デッド>、一昨日しって、昨日で二日目の初心者なわたしだ。<グレイトフル・デッド>を聴きながら、だいすきな<アイズレー・ブラザーズ>の棚を眺めたり、本を読んだり、ビールを飲んだりしてから、ひろみさんと杉江くんで庭の奥の場所にいく。あとはもう、杉江くんと天気のふたりにお任せすれば大丈夫、という信頼があるので何も言わない。
場所をつくる、という言葉に憧れはあるが、一から作るのがあまり得意ではない。というか、たぶん興味もないのだろう。あれば熱狂してやるに違いない性格だが、その情熱がない。例えば椅子はこれ、器はこれ、というほどにアイテムの知識がないし、調べるのが面倒くさいタイプなのだ。そのかわりに、つくられた場所の心地よさには異様に敏感で、「すき!」とおもうと、突き抜けてときめく。馬詰佳香(うまづめ・かこ)さんがつくった<BORN FREE WORKS>もそうだったし、タイパンツ展で長くお世話になった吉村眸(よしむら・ひとみ)さんの<Zakka>も、そして宮治ひろみさんがつくった<BRANDIN>の庭にある小部屋も、はじめてみたときに胸がときめいて、キラキラキラキラって音がするくらいの気持ちになった。そうおもった場所にご縁が生まれてお邪魔するときは、なるべく空気を変えずに使いたい、というのが自分の意思。なので、あまり手を加えることなく、少しだけ、道具として使うがアートにもなるものをあと二つだけ置きたいとおもっている。ひとつは夫の切り絵、もうひとつは<BIRDS CRESTION>の小玉譲二(こだま・じょうじ)くんには、もう相談済み。さてさて、いつ仕上がってくるのかな。でもいそがなない。別に始まってからでもいいのだ。わたしは今、ゆっくり船を漕ぎはじめたばかり。