マカロニえんぴつの『恋人ごっこ』という曲がすごく好きだ。カウントをとるイントロもいいけれど、ボーカルの声のせつなさや吐息、湿度を帯びた声色が、女子のハートに刺さる。わたしは「ごっこ遊び」が趣味のひとつで、中でも面接ごっこは得意中の得意。
ママ友のYちゃんは医療従事者で、昨日は久しぶりの有給なんだといって家にやってきた。娘の保育園時代からのママ友で、付かず離れずに仲がよい。ビールが好きなYちゃんだが、締めは赤ワインを呑みたい人。お料理があまり好きではないとはっきり言うところがかわいくて、そのかわりにお掃除が得意。家はいつお邪魔しても、水回りから床にいたるまで、ピッカピカ。昨日は冷えたビールをたくさんと、焼肉屋さんの手作りキムチをもってきてくれた。無理して手料理を持参しないところが、正直ではなまる。
保育園にはいって割とすぐの保護者会で、「自己紹介を兼ねて、お子さんの名前の由来を発表しましょう」というのがあった。Yちゃんの順番になったとき、Yちゃんはとても落ち着いた低めの声で話しはじめた。夜中から明け方に向かう時間帯に陣痛がきたときのこと、車窓から見えた暗がりの町の風景に散りばめられた「あかり」と「ひかり」の違い、その言葉の選び方、ニュアンスがなんとも詩的で、「なんてすてきな感性の人なのかしら! はい、合格!」と、心の中で丸をつけた。悪趣味だと言われたら否めないが、無意識に面接ごっこをしてしまう癖がある。お友達になりたい人、好きになりそうとおもう人、残念ながら今回はご縁がありませんでしたね、その採用・不採用を、頼まれてもいないが、心がオートマティックにしてしまう。店長、社長、人事、そういうポジションになったことがないし、この先もないと思うから実際の面接をすることはきっとないのが残念でならないほど、研鑽だけは積み重ねている。
昨日はおでん、春菊の白和え、ミニトマトのピクルス、油揚げと大根の炒めもの、枝豆のキムチをつまみながら、昼から夕方までダラダラ呑んでいた。なんの話の途中だったか「みもちゃんて、今ならどういう人が好きっておもう? クールな人を好きになったことってある?」と聞かれた。「ないね。クールっていうタイプの人にまず出会ったことがないし、これまで身近にいなかったから」と間髪入れずに答えた。するとYちゃん、「でも、けんようさん(夫)って、クールじゃない?」と言われて、呑んでいたビールを吹き出しそうになってしまった。「クールってなあに?」と念の為確認してみたのだが、喜怒哀楽があんまりでなくて、落ちついていて、感情の波がすくなくて…みたいなのを聞いていたら、それはまさに夫のことだった。笑いがとまらなかった。出会ったことがない、身近にはいないと言い切っていた自分の節穴加減には、いささかびっくりである。
医療従事者であることも多大にあるとおもうが、Yちゃんに会って彼女の死生感に触れるたびに、こんな人に看取ってほしいとふと想ってしまう。想っているだけだったが、昨日は「Yちゃんに看取ってほしい〜」と言ってしまった。低い声で「いいよ〜」と言って笑うYちゃんがだいすきだ。この文章を書いていることも、わたしがSNSをしていることも、何も知らないYちゃんは、今日も人の命にそっと寄り添っているにちがいない。