さっき朝だったのに、気がつくと陽が沈んでいる。この間お正月だったのに、もうすぐ2月。びっくりである。没頭すると、他のことがとまってしまう。この性分を、わたしが愛(め)でずに誰が愛でるのか。愛して生きてはいるけれど。
昨秋からシャツを縫うことに挑戦していて、時間があればずっと縫っている。基本をすっとばしてタイパンツに没頭してきたので、襟とか袖とか、「へー」という感じでいちいちおもしろい。縫い方の手順もわからないレベルなので、本を読んで、付属された通りのパターンでいちどは縫う。じぶんの好きな形というのが頭の中にはっきりあるのだが、仕上がったそれは、たいてい好みとはちがう。なので、すぐにほどいてしまう。そんな調子なので、めちゃくちゃ時間がかかるというわけだが、奥深くてたのしい。
襟はオープンカラーやスタンドカラーがすき。じぶんの好きなスタイルは、まず感じ(雰囲気)がよく、風がふわっとはらむ感じ、装飾を削ぎ落としたシンプルなもの、動きをじゃましないものがすきと、結局はタイパンツとおなじようなものを求めてしまう。そういう暮らしをしているし、動きを制限されることに、身体的にも精神的にも強くストレスを感じてしまうのだ。自由がすきというよりは、窮屈なことが苦手。夏になると毎年忙しくなるので、時間のある今こそできる学びを深めて、縫えるものは今のうちに縫って、夏を迎えたい。納得ができたら初夏くらいにどこかで展示会をしたいけれど、おもい浮かぶ場所もないし、いまいちイメージがわかない。そのうちみえてくるのかもしれないので、焦らずにゆく。今は目の前のことだけを。
修理などのご依頼も含めて、自分はとにかく手を動かすことが仕事なので、話をうかがって、いただいた仕事は一生懸命に手と心を動かしている。ジョン・ストッダートというアーティストの「プット・ラブ・ラブ・ラブ・イン・イット」という曲がある。イントロからやさしくて歌声があまくて、とてもすきなナンバー。じぶんの仕事も、こんなタイトルのような気持ちでありたい。語るよりもおおくの言葉を、ミシンを通じて伝えたいし、そこに愛を注ぎたい。
まず持って、暮らしが大事。そういう性分というのもおおきいけれど、何かを犠牲にしてまでたくさん縫えない。ちゃんと寝たいし、遊びたいし、ゆっくりしたい。あったかくなったら波乗りもたくさんしたい、ヨットも、素潜りも。お金もほしいけれど、ないこともないし、とりあえずは暮らせている。今の幸せなバランスを崩してまで手にしたいものは、今のところ、みあたらない。じぶんができる仕事と、時間は限られているのだ。だからこそ、縁があってじぶんが関わる仕事は、なるべくその先の人が豊かで幸せでありますようにと、愛をそそぐのみ。働くとか生きるとか、ぐるぐる考えて答えを探していた日々もたしかにあったけれど、削ぎ落としていくと、とてもシンプルなことなのかもしれない。とおくのいつかより、ちかくのいま。効率の悪さとか、成果のでないことに向き合う時間にしか学べないもの、見つめられないものが確かにあって、わたしは今、そんな流れに身を委ねている。