今の、SAUCEの仕事を通じで縁ができた金沢の酒蔵・福光屋さんの展示を観に、ミッドタウンへ。『福正宗とうるしの器 其の五 すはらゆう子展~山中めぐり編~』。すはらゆう子さんの漆の器、想像よりかなりお値段も手頃で買おうかと手にしたが、夫が柄を選びたい気がして昨日は購入をとどまる。本当は家族で観にきたかったのだが、こういうとき、週末休みでないとむずかしい。
建物の外に出ると、なつかしのTBSのビッグハットがみえた。働いていたのは20代の数年だけだが、こうしてみるとずいぶん都会で働いていたものだ。そのまま赤坂方面へ歩く。実家で暮らしていた26年、六本木は遠くてあまり足を運ぶ機会がなかった。六本木は物理的にとおいと感じでいた。歩きながら、赤坂はしっくりくるなあと、懐かしく歩く。餃子が有名な眠眠(みんみん)もちかい。仕事帰りに何度か食べにいった、思い出の店。同じ港区でも六本木と赤坂、少しの違いで空気ががらっと変わるから不思議。
もう一つ観たかった展示をみるために向かったのは、虎屋赤坂店、『虎屋のパッケージ展』。昔から虎屋のパッケージがだいすきで、それを一同にみれると知り、楽しみにしていた。明治・大正・昭和・平成・令和と様々なデザインを眺める。昭和50年代後半のデザインになると目に懐かしく、足を止める。母が鹿児島の帰省土産で買っていた水羊羹のパッケージを眺めていたら、祖父や祖母、叔父、叔母の顔が浮かんだ。人は目にしたもの、耳にしたものとセットで情景を記憶しているのだ。3階の喫茶でお茶をし、青山通りを表参道方面まであるく。外苑の銀杏並木は半分くらい色付いていた。
MOMAショップに行く手前でエルメスのディスプレイが美しく、しばらく眺めて、そのまま店内に入る。アップルウォッチのレザーバンドの色が好みで見せてもらうが、画面のインチサイズと欲しい色があわなかった。グリーンの美しいレザー。その近くにあったハンカチも見せてもらった。手刺繍がほどこされた、絵画のようなもの、6万円。ウォッチのバンドより高いハンカチ。ネオンカラーのステッチが目をひくマフラー、15万円。落としたら号泣するだろう値段。手が出ないけれど、手仕事の適正価格はこういうものなのかも、とおもう。アップルウォッチを買い替えてレザーバンドを買うか、悩ましいところ。その後MOMAで老眼鏡と、壊れて困っていたサングラスを買い直す。
父のところへいきたかったが、時間切れでやむなく帰宅。東京とひとくくりにいっても、好きな場所、正確には縁のある場所はごくわずかなものだ。結局は生まれ育った区と、その隣の区ぐらいしか馴染みがない。新宿区で生まれたわたしは渋谷区、豊島区、千代田区、中野区に思い出がある。少し遠いけれど、父の影響で中央区(正確には銀座と日本橋)、江東区の門仲(門前仲町)あたりは馴染みのある場所。学校があった町田市も思い出深い。鶴川からバスに揺られて20分くらいの、町田市真光寺町にある和光高校。それ以外のエリアは、結局ほとんど詳しくない。東京で生まれた人は、案外そんなもの。