先週のことだったか、『LOGGER WOOD SUPPLY CO』の末綱(すえつな)さんがレンバイの『SAUCE』にきてくれた。つれだってきた男性は、埼玉県入間市で『LAND GENERAL STORE』を営む人だという。呼び名はまっちゃん。『LAND』は以前、末綱さんのインスタグラムでみたことがあったお店で、雰囲気のいいお店だなとおもった記憶があったので、ああ、この人の店なのかと記憶が結びつく。両腕を組んでニコニコと話すまっちゃん。お客さんが来るとおじさん二人、すぐにフェイドアウト。お客さんが去るとまたコンビで登場。たわいもない話を30分くらいしたあと、まっちゃんはよだれ鶏を買ってくれた。「今度お店にいきますね」と伝えてバイバイ。
昨日、友人の運転する車でまっちゃんのお店に足を運んだ。『LAND』は入間のジョンソンタウンと呼ばれる場所にあった。元米軍住居地域跡地で、いわゆる平家で白くて三角の屋根の、米軍ハウスと呼ばれる建物が建ち並んでいた。そこだけがアメリカみたいな、不思議な空間だった。途中に大きなもみの木。トップには星の電飾。「クレーンじゃないと飾り付けないできないたかさだよね」と、友人とわらう。敷地はおおきな公園に隣接しているので、建物の場所によっては、ときどきぐっと視界がひらける。木漏れ日と木々と、走り回る少年たちの声が聞こえた。
LANDはメンズを中心としたアパレルのセレクトショップで、雑貨がすこし置かれていた。店の隅にはまっちゃんが使っているのであろう、ロングボードが数本立てかけられていた。まっちゃんとわたしは同級生だと発覚し、なんだか一気に親近感。話の流れで、近くに事務所をもつ森さんという男性を紹介してくれるという。森さんは設計の仕事しているとのこと。「ことりさんに一度だけ、一瞬あったことあるっていってた。森くんも同級生!」と元気な声でまっちゃんがいう。記憶の紐をたどって、たどって、たどりついた結果、思い出せなかった。森さんの事務所で「はじましての、二度目まして」と、挨拶を交わす。
森さんの事務所は、一言で表現するのは難しいけれど、ものすごく感じのいい空間だった。広い空間の隅っこに、申し訳ない程度の小屋のような部屋があり、目が留まる。実際は木々が見えて、広い公園に面しているのだけれど、アメリカ映画だと窓の外は湖畔が見えるような、そんな感じの小部屋だった。そこで仕事をしているという。老後の夢は船上暮らしのわたしにとって、タイニーハウス、タイニーなスペースはいつでも妄想ができるので、「わあ、素敵」と声に出す。ダラダラとおしゃべりをしたあと、こどもだったらかけずり回りたいような、一周をぐるりとまわれる構造になっている森さんの平屋をほんとうにぐるりとして、インスタグラムを交換したりして、さようなら。
長距離運転が苦手(飽きてしまう)なわたしに代わって、海だ山だとアクティブに動く友人の運転のおかげで、楽しいトリップができた。入間でできた同級生の友人は、少年の笑顔がこぼれ落ちるようないい顔をした中年(わたしも)で、小学校が一緒だったら「いい感じにとしとったじゃーん」と言って、笑いあいたい感じの人たちだった。大人になって友達ができるのはたのしいものだ。こんな仕事してるんだ、これで生計を立ててるんだ、すごいなと素直に尊敬もできる。この歳になると、仕事を通じでいろんなタイプの人にも、そこそこ出会ってきた。腹が立つこと、裏切られること、傷つくこと、頭に血が上った後に体温が下がるように消耗すること、そういうことにもだいぶ慣れた。人混みで肩がぶつからないように歩くみたいに、かわしたり、ぶつかったら「すみません」と謝ることもできる。慣れたけれど、でも、いつも、あんまりいい気はしない。そんな経験の中で、ときどきご褒美みたいに、なんとなく気が合いそうな人と出会うことができる。公園でボールをおっかけまわしていたときには知らなかった種類の痛みをしって、人はゆっくりと大人になる。だからうれしい出会いがあると、あの頃のじぶんよりもうんと、うれしいのかもしれない。