なんでも訓練だと思っている。言葉を綴る習慣は作家として必要だけど、それ以前に、自分は人として大切だと思っていて。いかに素直に生きるか、等身大の言葉で伝えていくか。さらけだす習慣は、日々のトレーニングでしか蓄積されない気がする。師匠で美術作家の故・永井宏(ながい・ひろし)さんからは、生前よく「ことりさん、ブログ(日記)で文章を書いた気にならない方がいいよ。あれはぜんぜん文章じゃないから」と言われていた。当時は書いている気でいたけれど、今は師匠の言っていたことがわかる。本を出すために書く文章は、もっと言葉を尽くし、時間をかけ、書いては書き直す。さらに編集者にダメ出しされ、落ち込み、時に傷つき、それでもと起きあがって、描き終わるとヘトヘトになる。空っぽになる。この日記は、まさに『朝メシ前』レベルで、10分もあればかき終わる。でも、日々のこんな習慣がないと、自分は本を出せないのもわかっているから、書く。でも、書くこと以上に、素直な眼差しでものごとを見つめる訓練の方が、トレーニングの意味としては圧倒的に近い。

娘が10歳になった今年、自分の波乗りライフも復活できそうな兆しを感じたので、久々にウェットスーツをつくることにした。春と秋に着られる3ミリのジャージ(冬用は素材が違ったり、厚さが違うのだ)のフルスーツ。『Birds creation』のジョージくんから紹介してもらい、『M-STANCE』の長嶋さんをたずねる。色々相談に乗ってくれて、あれよあれよと採寸してくれた。仕上がりは一ヶ月後とのこと。楽しみ。『M-STANCE』という名前の意味を聞いて、長嶋さんの思想に触れた気分。目と鼻の先にあるジョージくんの工房にも立ち寄って、お礼を伝える。工房には湘南のサーフショップのオーナーもいらしていて、『THE FIVE BEANS』のアイスコーヒーを振舞ってくれた。氷入り。暑かったから、冷たくて美味しくて最高。
近頃バンド活動に夢中のジョージくん、昨日も遅くまでスタジオにいたとかで、いつもより眠そうな目をしていた。充電100%ではなく、70%くらいの瞳(ひとみ)。工房は子安の里の中腹で自然に抱かれるように存在し、そもそもの居心地がいい。決して人を逸(そ)らさないジョージくんだから、色々な人が彼に会いにきて、癒されて帰るのだろう。故に疲れることもあるのではないかと、昨日ふと思った。自分もそんな時がある。だから一人の時間も必要で、音楽が必要で、海が必要なのは、当たり前といえば、当たり前。
昨日は「わたしも楽器やりたいんだよね」と話をして、「でもサーフボードと一緒で、ロングみたいな長くて大きいのじゃなくて、ショートボードみたく、コンパクトな楽器がいいの」と話す。「ギター持っても似合わなかったんだよね」と言うと、うんうん、よくわかるといった表情の後に「だからってみもちゃんがウクレレもなんかなー」とジョージくん。で、いきなり「オカリナは?」と。オカリナ!? カナリアみたいでかわいい響きじゃない。そこから、ちいさなみもちゃんに似合うちいさな楽器縛りで盛り上がり、ハーモニカ、カスタネット、トライアングル、木琴と、だいぶ遠くの方まで話題は飛行。「そうそう、奄美のビーチで地元の人が三線(さんしん)ひいて歌ってて、それがすごく良かったんだよ〜」と話すと、「みもちゃん、三線(さんしん)いい!!三線(さんしん)いいよ〜!!」とジョージくん。とりあえず神田にGOじゃない?ってところで話題は着地。イメージばかりが先行する、みもちゃんのバンド妄想。

午後は鎌倉でご飯屋を営むMちゃんと茅ヶ崎へ。すごく素敵なワンピースを着ていたので、平塚の『花水ラオシャン』のラーメンもいいけど、カフェがイメージじゃない?ということで『GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス』内のレストランへ向かう。お互いにカラーのトーンが近いワンピースをきており、ちょっとハチっぽいカラーリングだったので、『ハニーズ』というユニット名を組む。食後は『メゾンボングゥ』で焼き菓子やケーキなどを買って、我が家で娘を待ってみんなでお茶。昼寝する人、宿題する人、スイッチスポーツでテニスする人、それぞれにすごす午後。
サンセットの時間に、なんとなくここ数ヶ月の近況をMちゃんに話す。法学部出身で頭のいいMちゃん、やられたらやり返すタイプの負けん気が強いMちゃん、一見わかりにくいが、わたしの周りでは一位二位を争う心優しいMちゃんの一挙手一投足を、おもしろおかしく聞く。勉強嫌いで負けん気ゼロのわたし。似ても似つかぬ二人、なのに仲良しな我々『ハニーズ』。
ここ数ヶ月くたびれることがあって、休息する決断をして、やっと元気を取り戻しつつある最近。ひとえに友人たちのおかげで、家族のおかげで、海や音楽のおかげ。旅の力もおおきい。昨日Mちゃんに話していて思ったが、じぶんは、なるべく人のいいところだけを見て、全ての人と付き合っている。それを見られなくなった時は、シャッターを閉めるんだということを伝えた。傷つくことはたくさんあっても、それを悔しいとか、やり返すみたいな感情は昔からほんとうに見当たらない。その場から去ることしか、頭にない。前に占いで、「みもさんがダメだと思ったら、その人は本当にダメです。そのくらい、人のいいところを見られる人だから」と言われたことがある。(ちなみに夫は「人のダメなところを見る人なので、二人の意見が一致してダメな時、その人はもう本当にダメです」と言われてた!笑)
エネルギーは命だから、わたしの命や時間を、なるべくいいものに注ぎたい。自分だけではなく、世の中がそうであれば平和になるはず。世界平和とか、よく見られらいとか、有名になりたいとかでもない。頑張る、我慢する、根性論、戦う、全部できない。身近な人、そばにいる人、毎日顔を合わせる人にこそ、もっとも優しい言葉と愛を注ぎたい。綺麗事かもしれないが、そんな人でいたい。なんでも笑いに変えていきたいけれど、笑えない時は、もう無理なときなのだ。昨日会ったみんなには、たくさん笑わせてもらって、ありがとうしかない。彼らが疲れたり傷ついたとき、同じエネルギーを返せる自分でいたい。そういうことを、一番大切にしたい。