三連休の初日は日暮里の繊維街に仕入れへ。鎌倉から横須賀線に乗っている間、知人のインスタグラムのストーリーに目がとまる。丸の内で面白そうなイベントをやっていて、それに参加しているとのこと。速攻でLINEに連絡すると、今まさにスタッフとして会場にいると言うので、日暮里駅の前に東京駅へ向かう。
松屋さんは『ROUND』という会社を経営されていて、刺繍や、Tシャツのシルクスクリーンなどをお仕事にされている。途中ハワイに引っ越しされ、あちらでお店も出されたり(今もあるはず)、今はファミリーとともに再び日本に生活の拠点を移されたりと、アクティブな人。タフでもあるはず。仕事を通じで出会って、かれこれもう17年くらい。いつあってもひょうひょうとしていて、愉快なおじさん。
刺繍のライトなイベントなのかと勘違いしていたら、会場は結構大きくて、そこにまずびっくり。『LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI』というイベントの一角で、「おようふくなどに刺繍のサービスができる」、というピンポイントのパートで関わっておられるようだった。このイベントをオーガナイズされていたのが、松屋さんの旧知の仲で「スタイリストの小沢宏(おざわ・ひろし)さんです」と、松屋さんからご本人をご紹介をいただく。会場のこと、イベントのこと、これまでのお仕事のことなど、ものすごく丁寧に、熱く語って下さった小沢さん。話の内容や、見ていらっしゃる未来がすごくしっくりきて、こちらもしつこく質問したりして、楽しくお話をする。『スタイリスト』という職業の人に出会ったの、はじめてかもしれない。ハートが素敵な人だった。会場は東京駅直結の丸ビルから有楽町駅の手前までカバーしていて、丸の内の街全体を歩いて巡ることができるシステム。楽しそうだったので、主に靴屋を中心に見てまわり、最後にまたメイン会場に戻ってきた。
簡単に説明するのは難しいが簡潔(かんけつ)に書くと、『おようふくや靴を、『DEAD STOCK』ではなく『LIVE STOCK』にする』ということ。ただ、リサイクル、アップサイクル、サスティナブル、と声を大にするのではなく、そこにはおそらくスタイリストの審美眼が大切で、『DEAD』としてストックにいた選手たちを、『LIVE』なストックに連れてくる感じ。すごく素敵な思想だなと思った。
エコとか、環境とか、声高に言われすぎると頭が痛くなることがある。上滑りしていると見ていて体温が下がるし、ときに怒りをともなった感情に触れると、心が折れる。素晴らしいことだが、言わずにやっている人もこの世には当たり前にたくさんいる。その代表的なお手本となるのは、他の誰でもない子供たちだと個人的には思っている。彼らは無闇にお金を使わない。使えないから。だからこそ、お茶を必ず首からぶら下げているし、色褪せていても、お気に入りのおようふくが大好きで、洗って乾いたらまたすぐに着たがる。次々欲しいって買わない。外食よりもお弁当が大好きで、レジャーシートが大好きで、どこでもそれを広げて世界を豊かに眺めている。彼らには敵わないと、いつも思う。お金で物事をはからないからだ。そういう彼らに、美しい風景を、海を、山を残したいと、わたしは心から思っている。だって、自然は誰のものでもない、預かったものだから。日々の家事で、ゴミ捨てを忘れがちなわたしは家事の中で一二を争うくらいにゴミ捨てが大嫌いだから(洗濯も大嫌いなんです)、なるべく、そもそものゴミを減らしたい。そういう思想で、わたしは生きていく。
どんなお洋服でも、それがハイブランドでもファストファッションでも、気に入ったら長く着たらいい。そのサイクルは、みんながそれぞれに決めたらいい。モノを大切にするのは大事だが、大人はおしゃれな気持ちも忘れないでいたい。若者と違って、おじさんとおばさんは清潔感が大切だから。売れない店やブランドは倒産するだけだし、カスタマーも、そのニュースが痛くも痒くもないなら、そのブランド、創立者、デザイナー、職人を、そもそもそんなに好きではなかったということだけだ。服に限らない。たべものだってそう。企業だけではなく、個人店だってそうだろう。とてもシンプルで、そこにあなたの愛があるかないかだけ。とても学びの多いイベントだった。行って本当によかった。
日曜日の昨日は再び鎌倉駅から東京方面へ。目黒で、グラフィックデザイナーの川畑あずさ(かわばた・あずさ)さんと打ち合わせ。いつも思うが、仕事に真摯で、デザイン以外の部分までも、気配りや目配り、想像力がかなり高い。スケジュール管理もずば抜けていて、秘書のような才能もかなり高い気がする。外資系のセクレタリーとかにいそうな感じ。自分にはないものばかりだけれど、それを妬んだり、羨ましがったりすることはなく、輝く光を真っ直ぐに眺めることができるのは何故だろう。この人ならと、安心して仕事をお願いできるし、この人にお金を払いたいと思う。お願いしているお仕事のリリースは、また追って。
打ち合わせを終えて、4時オープンの『とんき』でひとりでビールとヒレカツ定食を堪能してから、西荻窪と吉祥寺で家族のあれこれ。で、今は吉祥寺で朝を迎えている。久しぶりに娘は欠席で、母とわたしの二人きり。母は相変わらずに最の高(さいのこう)。忘れっぽいし、同じことを聞いてきたりする時空の中で、彼女なりの美意識を保ち、美しいフォームでクロールしている感じ。ストロークがきれいだから、わたしはそれを邪魔しない。