福岡滞在中、友人と一緒に大濠公園(おおほりこうえん)をランニングした。公園の敷地内に『福岡市美術館』がある。落ち着いた色調の感じのいい美術館で、その美術館の前に一台の車が停まってた。それが、『SNOW SHOVELING』(スノウショベリング)だった。移動本屋としてトラックを走らせている人、というのは先週足を運んだ盛岡の『BOOKNARD』の店主、早坂さんを通じて知った。早朝だったので、車のみが停まっていて本人は不在だった。ホテルに戻ってシャワーを浴び、朝食を食べて、福岡市美術館のスーべニールショップなどを見ている間に移動本屋は開店した様子で、見させてもらう。
店主の中村さんという男性は、ちょっとサーファーみたいな気楽さで、とても話しやすい人だった。サーフボードを積んでいるならわかるんだけど、そっか、本を積んでいるんだね、という感じの印象。大きなバンみたいな車の左右がパカっと開いて、本棚が出てくる。ぎちぎちに本を詰めず、ちいさくて感じのいいアートもディスプレイとして綺麗に飾ってあり、美的センスがいい人だなあと思う。「ステキ!」を連発していると、「もっと褒めて!」と言ってきて、思わず笑う。褒められたとき、謙遜するか、ありがとうと言うか、大体その2パターンだと思っていたが、もっと褒めて、というパターンもありなんだなとおもしろかった。本だけではなく、詩のガチャガチャとか、アパレルとかいろいろな角度から言葉を発するアプローチで、そのアイディアが面白くて一通り買う。文化系と体育会系のハイブリットみたいな人で、すごくいいなと感じた。普段は駒沢公園の近くに店舗があるようなので、移動本屋の旅が終わった頃に、足を運んでみたい。お店で待つのではなく、自分から動いちゃう感じ、フットーワークの軽さ、センス、色々刺激を受けた。
自分は視覚的な美的感覚が一番大事で、一瞬で、心がそれを好きか、そうじゃないかがわかる。ただ着飾っているとか、なんとなくこ綺麗な店とかだけでは、まったく心が反応しない。キタナシュランのような店でも、心が動くことは確実にある。うまく言えないが、指の先にまで魂が宿っている人はわかる。思想、気合い、苦悩、喜び、そういうものが指先にまで届いている感じがするのだ。福岡の旅は、そういう人にたくさん巡り会えた。中村さんもそんな風に感じた一人。